◇◇ GEMS(ジェムズ)とは ◇◇

GEMS(Great Exploration in Math and Science)はLHS(ローレンスホール【註1】)で20年近く研究され続けてきた科学・数学のカリキュラムの一つで、体験学習法の理論に基づく、アクティビティ(活動体験)が中心のカリキュラムです。学校で実際に試し、試行錯誤を重ねて改訂されてきた科学や数学を習得するための優れた教材です。

ビニール袋の中で化学反応を起こしたり、巨大なシャボン玉をとばしてみたり、また宇宙から来たという不思議な緑色の物質を調査したり、太陽熱の実験をしたり、 GEMSnoアクティビティの一つ一つが、子ども達が想像力を駆使しながら、科学の基本的概念・方法を学べるようにと考案されたものです。

GEMSは幼稚園から高校1年生までを対象とした70冊あまりの教師用手引き(指導書)を出版していますが、「アリの巣」「ミミズ」「酸性雨」「文化遺跡調査」「魚観察」「動物の行動観察」「環境探偵」など、どれもが楽しく、だれでも専門的知識がなくても指導でできる内容の指導書です。野外教育や環境教育の指導にも有効と考えます。各手引きには詳しい背景情報、評価方法、関連文献リストが含まれています。また、学校の教員がGEMSを学校のカリキュラムに取り入れられるように、教員対象のワークショップもおこなっており、ネットワーク作りにも力を入れています。

 

◇◇ ローレンスホール研究所(Lawrence Hall of Science) ◇◇

ローレンスホール研究所は25年以上にわたり、子どもの科学教育を研究、開発してきた研究機関であり、アメリカの科学教育改革を支えてきました。これまで開発されてきた数多くのカリキュラムのうち、【註2】OBIS、【註3】SAVI、【註4】FOSSなどが、専門家によって日本でも紹介されています。

サンフランシスコの隣り、バークレーのカリフォルニア大学バークレー校の広大な敷地の中、チルデンレジョナルパークに続く山並みにあります。ここからは、バークレーの町並み、サンフランシスコ湾、ゴールデンゲートブリッジが俯瞰できます。豊かな自然と静かな環境に恵まれ、フロアの最上階には特別展を行う会場、ショップがあり、下のフロアは円形状で、中には、生物ラボ、コンピューターラボ、プラネタリウム、劇場、数学、化学、物理、天文などのさまざまな講義室があり、脳研究についての展示などもなされています。

我々は1998年夏以来、ローレンスホールを訪ね、GEMSのアメリカでのワークショップ、研修に参加し、ローレンス科学館の方々と交流を深めてきました。そして2000年11月、全米に広がるローレンスホールの科学教育プログラムの一つであるGEMS(Great Explorations in Math and Science)の拠点の一つとして、日本での普及を目的とするセンターを立ち上げました。

 

◇◇ GEMSの教育効果 ◇◇

GEMSで期待できる教育効果としては、以下のような効果が掲げられています。
◆◆(参加者、生徒は)◆◆
 ● グループ学習によって、メンバー間の話し合いが積極的に行われ、言語能力、コミュニケーション能力などの発達が促される。
 ● 体験学習によって、プロセスを考えていく能力が高まる。
 ● 活動中心の授業で問題解決過程における創造力、自主的思考力が養われる
 ● 身近な素材や教材を扱う授業で学習意欲が高まる。
◆◆(指導者は◆◆)
 ● 教師、教育者間のコミュニケーションが活発になり、科学、数学の体験学習法をより深く理解できるようになる。
 ● 考え方やマニュアルがしっかりとできているので、専門的知識、技術がなくても、(学習の支援者として)楽しく指導できる。
 ● 体験学習の評価方法についての理論、アイディアを学べる。

 

◇◇ GEMSセンター・ジャパンのゴール(目標) ◇◇

1. 「理科嫌い」をなくす
GEMSは、このような体験をベースにした科学学習によって、基礎学力を身につけるとともに、自分自身で考える、自ら学ぶ力をつけることを目標としていますので、学校における総合的な学習の時間、地域におけるさまざまな自然体験活動、そして、家庭教育にも取り入れることができます。体験を通して楽しく学ぶことによって、科学がもっと身近なものであると実感し、われわれの周りの森羅万象を観察したり、正しく思考したり、判断する力を養うことを通して、科学は難しい、嫌いだといういわゆる「理科嫌い」「理科ば なれ」をなくすことに貢献できます。

2. だれでも科学・数学の指導者になれる
サイエンスとは、「専門家だけが行なう学問」というわけではなく、たとえ理科の教師でなくても興味や関心、探究心をもっていれば、誰でも指導をすることは可能です。GEMSの教師用手引き、リーダー用手引き、親のための手引きの中では、原理、考え方、手順なども分かりやすく解説されています。日本において、「理科ばなれ」は子どもたちだけでなく大人にも起きている現象です。GEMSは大人が体験しても充分楽しめる内容で、科学は身近なものと感じるようになるでしょう。

3. ファシリテーションとプロセスを考える力をつける
GEMSでは、指導者がさまざまな質問を投げかけるように工夫されています。この、オープンエンド質問 を指導者が発することによって、学習者は、「答えは一つじゃない」、「自分の意見を自由にだせる」という学習意欲の高まりをみせます。
学習者同士の話し合いをさせたり、プロセスを重視する学びをファシリテート(進行、促進)する力をつけることが、指導者にとって重要だという体験学習法の理論に基づいてガイドブックは作られていますので、この活動を体験した学習者は、考える道筋が大切であるということを学ぶようになっていきます。

4. 自然への理解を深める
自然を理解し、人間と自然がともに持続してゆく関係を築いていくためには、感性や直観によって得られる感動体験と自然に対する科学的認識や論理的思考は、どちらも必要であり、両者は、対立するものではなく、表裏一体の関係にあります。

GEMSの教材は、自然を楽しみながら、自然の科学的理解、論理面を促進することに役立つように作られています。また、GEMSには、科学的思考力、判断力のみならず、人間の心の活動ともいえる文学、芸術、音楽も取り入れたガイドブックも数多くあります。自然体験活動において体験学習法に基づいたプログラム作りにもGEMSが大いに参考になると思います。

 

◇◇ GEMSセンター・ジャパンのミッション(使命) ◇◇

学校やキャンプなど体験活動の時間、あるいは各家庭で、一人でも多くの子どもたちからファミリーまで、GEMSの楽しいカリキュラムを体験してもらえるようにGEMSの普及に努めていきます。そして、感動体験とともに科学的認識、思考力・判断力を伸ばすことによって、現実世界をより深く理解し、環境教育の目指す持続可能な社会を実現することが、GEMSセンター・ジャパンのミッションです。

GEMSジャパン・プロジェクト委員長 
古川 和 

 

【註1】ローレンスホールオブサイエンス(Lawrence Hall of Science)
すべてのローレンスホールのプログラムは同じゴールを目指している。すなわち、実際に科学を体験するおもしろさを通じて科学に対する好奇心や興奮を燃え立たせることがゴールなのである。毎年、50万人以上の若者や生徒、その家族の人たちが訪れ、科学館の特別展示やディスカバリーラボ、サイエンスシアターの催し、学校向けワークショップに参加している。

【註2】OBIS(オービス)
Outdoor Biology Instructional Strategies(野外での生物教育カリキュラム)は日本でも広く紹介された。

【註3】SAVI(サビ)
「障害児用理科カリキュラム」は阿部 治氏(現埼玉大学教育学部助教授)らによって日本に研究紹介されている。(1984年日本理科教育学会研究)

【註4】FOSS(フォス)
「Full Option Science System」は国立教育研究所 科学教育研究センターの小倉 康氏によって研究紹介。「科学授業における思考力・判断力の育成に関する実践的研究」 1999年3月 国立教育研究所